父と犬と行った忘れられない山菜取り

私が小学5年生の時の話です。
私が住んでいたのは山の中。自然豊かで、家の近くを熊やニホンカモシカが通るような場所でした。
父は山に山菜を採りに行くのが趣味で、仕事が早く終わると自分しか知らない秘密の場所で季節の山菜を採っていました。

山菜が沢山採れる秘密の場所は誰にも教えたくないけれど、一人で行くのは熊に会う可能性が高い。という理由で小学生の私はよく一緒に連れていかれました。手には大きな熊よけ鈴を持たされて。
ある日、学校の帰り道に子犬が段ボール箱に捨てられていました。
犬好きな私は一匹連れて帰り、何とか家族を説得しその犬を家族に迎える事ができました。
オスの雑種で、名前はコロと名付けました。ただ、祖父が犬の登録に行ってくれたのですが、名前を聞かれて何を思ったかゴーと答え、その日から名前はゴーになりました。

ゴーはとっても活発な性格をしていて、すくすくと成長しました。ゴーが来てから1年経ち、柴犬程の大きさの立派な成犬になりました。
父の仕事が早く終わった日に「今日はゴーも一緒に山菜採りに行く。」と話し、私とゴーを連れて秘密の山菜採りの場所に行きました。目的の場所に着くと父はゴーのリードを外しました。自由に走り回るゴー。名前を呼ぶとちゃんと戻ってきます。「丁度いい熊よけだな。」と新たな相棒が出来て嬉しそうな父。

少ししてから「お父さんはそこの崖になっている所の上に山菜採りに行って来る。熊よけの鈴を鳴らしながら犬と待ってて。」と崖を登り始めました。それを見たゴーは自分も付いていく!と軽い足取りで崖を登っていきます。父は「なんだゴーも来たのか。」と私にも聞こえる様に大きな声で犬と会話していました。父の山菜を入れる背中に背負ったカゴがいっぱいになった様で、「今から降りるからなー!」と声がして、父とゴーが降りて来るのを待っていました。

しかし、中々戻ってきません。父の「なにやってんだー!」「まったくもーう!」と言う声が聞こえ、数分後に犬を背負った父が現れました。ゴーは自分で降りて来れなくなった様で、申し訳なさそうに父の背中に背負われていました。人生で初めて背負われている犬を見て、あ、犬って大人しく背負われるんだ。と衝撃を受けた思い出です。その後、ゴーは二度と山菜採りに連れて行ってもらえませんでした。

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